東京新聞
「外国人にブーム来(COOL)」と、まるでデュアルハンコのデザインのような見出しが印象的なこの記事は、平成30年(2018)12月25日に東京新聞最終面に掲載されたものです。
ちょうどこの記事の取材の話が担当記者さんとの間で進んでいたところ、イギリス人の某私立大学教授のお客様から、彼がホリデーシーズンに帰国するのに合わせ、ご家族へのクリスマスプレゼントとして11人分のデュアルハンコをご注文いただきました。
それを早速記者さんにお伝えすると
「そのお客様が引き取りにいらっしゃるとき、私のスケジュールが合えば同席してそのお客様にインタビューさせていただいてもよろしいでしょうか?」とのご要望。
それについてお客様にたどたどしい英文メールでおうかがいを立てるとありがたくご快諾を頂戴しました。
そしてお引取りの当日、待機していた記者さんがお客様に驚くほど流ちょうな英語であれこれと質問。
おかげでこのイギリス紳士のお客様から頂戴した
「世界中のどこにもない、パーソナライズされた(=その人専用の)ギフトだ」
という「生の声」が掲載され、よりいっそうリアリティ溢れる記事になりました。
さらには最終面という目立つ場所にドカ~ンとカラーで載せていただき、ありがたいことこの上なしです。
なお、残念なことにこの記事は現在ではネットで読むことができません。
とても素晴らしい内容なので下記に転載させていただきます。
以下、区切り線内文章の著作権は東京新聞に帰属します。
■外国人にブーム来(COOL)
「真意気留」「暖手」「蔵宇主」ーそれぞれ「マイケル」「ダンテ」「クラウス」と読む。
最近、外国人の名前に漢字を当てたはんこが、日本を訪れる観光客にちょっとしたブームなんだとか。
漢字の下に、アルファベットで名前の読みが入っているのがミソ。
日本の伝統文化が感じられるのに加え、自分専用に仕立てられたスペシャル感が受けているようだ。
■老舗が作る「Dual Hanko」
「ワォ、クール!」。
12月半ば、品川区の「文福堂印房度」に来店した英国出身の大学教授サイモン・ダウンズさんが目を見張った。
手にしたのは父ジェフリーさん用の「侍絵歩里」など、家族ら11人分のはんこだ。
クリスマスのホリデーシーズンで帰国するのに合わせ、土産にと注文しておいた。
友人の女性のケイさん用は、本人が形と意味を気に入った「敬」。
サイモンさんは「『侍』も父の個性にピッタリ。世界中のどこにもない、パーソラナイズされた(その人専用の)特別なギフトだ」と喜んだ。
漢字とアルファベットで名前を刻む「Dual(二通りの)HANKO」を考案したのは、店の三代目の松崎文一さんだ。
同店は1921年創業の老舗で、二代目は天皇御陵印をはじめ、鈴木善幸、中曽根康弘両元首相の私印、最近では将棋連盟の印も手掛けた。
松崎さんによると、ここ数年、上野や浅草などの観光地で店を営む同業者から「外国人が来店した」という話を聞くようになった。
しかし、漢字のはんこでは母国では意味が通じず、本人を表す印として使ってもらえないのではないかと考え、アルファベットを併記するアイデアを思いついた。
意匠・商標登録し店のサイトに載せたところ、訪日客が立ち寄るようになった。
まず、名前の読み方を松崎さんがローマ字に変換する。
James(ジェームス)なら「Ji Ei Mu Su」という具合だ。
それを基に、客は松崎さんが作った対照表から、音に合う漢字を選ぶ。
表には「時 Ji time」など、読み方を意味が書いてある。
「グッドミーニングな漢字を探そうね、と。馬が好きなBarryさんなら『馬里』とか」と松崎さん。
使う漢字が決まったら、パソコンでレイアウトし、書体を選んで機械で彫刻する。
1本約1時間で完成。
(中略)
「DAUAL HANKO」を紹介したテレビ番組がネットで広まると、若者らにも話題になった。
日本へ向かう飛行機の中ではんこの映像を見た外国人カップルが、店を探して空港から直行してきたこともあった。
「常にお客さんが面白がるものを作るだけ」と松崎さん。
これまでにも織田信長や豊臣秀吉、徳川家康が用いた書体をはんこに取り入れるなど、独自の工夫を重ねてきた。
英会話も勉強し、サイモンさんとのやりとりは流ちょうで、
「対面で話し合いながら作るのが楽しい。自分もささやかな国際交流というか、1ミクロンずつ世界が広がるような気がする」と笑顔を見せた。
文福堂印房は品川区東大井5の7の12、電話03(3472)5171
文と写真をご担当くださった記者様方に、この場を借りて改めて厚く御礼申し上げます。
ありがとうございました。